19の夏~私の愛した殺人鬼~

 突然、紗耶香の中から『死ぬ』という単語がポンッと弾き飛ばされた。

 小学校で習った言葉、習った漢字がわからない。


「しぬ……」


 その言葉の意味を求めて、フラフラとリビングを出て行こうとする。


「紗耶香!」


 由佳子に痛いくらい腕を握られて、立ち止まる。

 いつも誰かを魅了する大きな目が、今はどこも見ていない。

 焦点の合わない黒目は、ぽっかりと開いたブラックホールのようだ。