「キャー! 紳一、スゴーイ!」

と、実際に声に出して叫んだのは私ではなく、隣で応援していた綾乃さん。

「惠子ちゃん、紳一の泳ぎ、見たわよね!?」

「はい、もちろん」

「中学の時とは別人の泳ぎよ? 私はあの泳ぎをしてほしかったの。やっとあの子の才能が開花したんだわ…」

綾乃さんはすっかり興奮していた。

もちろん私も、予想以上の紳君の泳ぎに、胸が高まる思いだった。でも……

同時に戸惑う気持ちもあったの。その訳は、予選前日の金曜日の、学校の帰りに遡る。