咄嗟に、“病弱”という言葉を思い出した。 まりあは、病弱なんだっけ……。 ふと、母とまりあを重ねる。 自分の体が弱いのに、自分の体より人の体を心配するところが、そっくりだ。 貸してもらった、まりあの薄桃色のハンカチから、甘い香りがした。 ――まりあの匂いだ。 ハンカチを見ると、「MARIA」と空色で刺繍がされていた。 刺繍は、お世辞にも上手いとは言えなく、手づくりかな…と思った。 でも、薄桃色に空色の刺繍が映えていて、春の空を思い浮かべる。 刺繍はいびつでも、色合いは好きだ。