アリスズc


 エンチェルクは、モモと共に都への帰路についていた。

 これから、彼女が都と太陽の子をつなぐ仕事をするのだ。

 その重要な使命を、エンチェルクは喜んで受けた。

 まず、見て聞くのだ。

 そして、自分の中でしっかりと咀嚼する。

 他の事象と突き合わせ、そして、結論を出す。

 答え合わせは、テルやヤイクに報告をすれば、そこで出来るだろう。

 彼らの手足に、なるのだ。

 そのために、エンチェルクは都へ帰ってきたのである。

 そして。

 これから、ウメに会う。

 かつての自分のように、彼女につきっきりではいられなくなるだろう。

 そんなことを、ウメが気にするはずはない。

 それどころか、きっと喜んでエンチェルクの仕事を応援してくれる。

 分かっている、分かっているのだ。

 この国のために生きようと、彼女は思ったのだから。

 ウメもまた、同じように思って生きてきたはず。

 だから。

 その道は、結果的には彼女と同じ道になるはず。

 分かっているというのに、エンチェルクは往生際悪く、何度も何度も回転する思考を止められずにいた。

 昔の自分に、別れを告げるということは。

 その決別を、確実なものにすることが、ウメとの再会であるという皮肉は、彼女の勇気を多数かき集めなければならないことだったのだ。

 モモと一緒でよかった。

 彼女の歩く速度で、自分も歩くだけでいい。

 そうすれば、内畑が見えてくる。

 その間の小道を歩き、道場の脇の家に行けばいいのだ。

 白い髪が、ぴょこりと道場の影から覗く。

「桃ー!! エンチェルクイーヌルト!!」

 その女性の声は、とてもとても大きく、喜びに満ち溢れていた。

 ああ。

 そんなに大きな声を出したら。

 エンチェルクの心配など、遅すぎるだけだった。

 白い髪の後から、女性が現れる。

 遠目でも、見間違うはずなどない。

 まっすぐに立つ、たおやかなあの女性を。