アリスズc


 コーは、来なかった。

 その事実で、本当はハレには十分だったのだ。

 モモにもついてくることをせず、自分にも会いにこなかったのだから。

『この世で、たった二人だけの仲間』

 彼女は、そう二人のことを表現した。

 それは、本当のことで。

 そして。

 自分は、その二人に割り込むことなど出来ないのだと。

 そう、モモに言われたのだ。

 逆に言えば。

 彼女もまた、割り込めないでいるのだろう。

 コーは、特別な人に出会ってしまった。

 その運命は変えられるものではなかったし、予感もちゃんとあった。

 ハレは、のんびりしすぎたのだ。

 テルに宣言しておけば、それで安心というわけではなかったというのに。

 だが。

 コー相手に、急ぎたくなかった。

 ひとつずつ、ひとつずつ、彼女がこの世のことわりを知り、ハレを知り、そして大事にあたためていきたかったのだ。

 だが。

 彼女のためと手放した。

 梅とトーという教師を持つ彼女は、次に会う時はとてつもなく成長していることだろう。

 そして、言われるのか。

『コーと申します、どうぞよろしくお願い致します』と。

 ハレは、頭を振った。

 ノッカーが鳴ったのだ。

 テルが、入ってきた。

 話し合わなければならないことが、いろいろあった。

 ハレは、一度目を閉じて。

 網膜の裏に焼きついているコーの笑顔を消して、弟に向き直るのだった。