アリスズc


 父とリリューの稽古姿は、男らしい力のこもったものだった。

 この姿を見ると、桃も少しうらやましくなるのだ。

 もし自分が男だったなら、いま父と木剣を交わしていたのは自分だったかもしれない。

 どちらも手を抜かず、だが、しかと相手を見すえて剣を交える。

 男というものは、強いものに憧れずにはいられないのだろうか。

 エインは、すっかり二人の剣技に見惚れているようだった。

「彼より…強いんだろう? 君の伯母上は」

 そう問われて、桃は首を傾げた。

 何を持って、強いといえばいいのか。

 純粋な筋力だけを言えば、リリューの方が上だ。

 技も、そう遜色がない気がする。

 肝も座っている。

 違いがあるとすれば。

 深み。

 一徹。

 不遜。

 自分の伯母に、不遜というのは失礼な話だが、価値基準は、あくまでも彼女自身が決めたものに準じている。

 それが、周囲には時として不遜なものに見えるのだ。

 特に、偉い肩書を持っている人には。

 そういう意味では、伯母は無敵のように見える。

 いつか、リリューもあの不遜さを身につけるのだろうか。

「んと…とにかく、すごい人、です」

 強い人、なんて言葉でうまくくくれなかった。

 聞くよりも、見た方がいい。

 そして、剣を打ち合わせた方がいいと、モモは思ったのだ。

「ふぅん…そうか」

 いま。

 少しだけ、エインの心の針が──都の方へ振れた気がした。