「おら、乗れ」 そう言う笈原はすでに自転車にまたがっていて準備万端。 今日は木曜日。 笈原の部活の休みの日。 「……」 「え。乗らんの?」 「いやっ、乗るっ!」 「うん、早く乗れよ」 「う、うん」 あたしは急いで後ろに跨がるように座る。 「よっし、行くぞー」 自転車の後ろは、彼女の特等席みたいなもの。 …な気がする。 前まで梨音ちゃんの場所だったそこに、 あたしが座っていいのかと一瞬、躊躇(ちゅうちょ)してしまった。