「……怒ってないのかよ」

そんな中、俺はぽつりと呟いた。

「へ?」

「土曜日。俺勝手に帰っただろ?」

一度は我慢したけど、結局耐えに耐えきれず竹田になにも言わずに帰ってしまった。

いつもならその事実さえ綺麗さっぱり忘れてるところだけど、竹田がカラオケに行く前と変わらずに話しかけてくるから気になっただけ。


「あー、全然いいよ!むしろムリに誘って悪かったかなって俺のほうが思ってたんだ」

竹田の優しい言葉が少しだけ痛かった。

〝そんなことない〟〝俺も勝手に帰って悪かった〟普通ならそう言い返すんだろうけど、難しい言葉じゃないたった一行で収まるその言葉が出てこない。

まるで喉になにかが詰まってるみたいに。


竹田はそのあとも何事もなかったかのように楽しそうに喋っていた。