住んでいるところなんて気持ちわるくてだれにも知られたくない。すぐに違うと否定しようとしたけど、この時間に弁当を買って徒歩で帰ってる時点でなにを言っても無駄なことぐらいわかる。
「だったらなんなの?」
俺は素っ気なく開き直った。
「私も家もこの近くなんだ。偶然だね」
最悪。なんでよりにもよってこの女なんだよ。
つーかなんでこいつ平然としてんの?
昨日目の前で連絡先が書かれた紙を捨ててやったのにまるで昨日のことなんてなかったかのような振るまい。
ただのバカなのか。それとも神経が図太いのかは知らないけど本当に苦手だ。
青木夏月に会ったせいで疲れが倍増したし、腹減ったし、今すぐ寝たいし、喋ってるこの時間が無駄すぎてツラい。
俺が無視して帰ろうとすると「はい」と青木夏月は昨日のようになにかを差し出してきた。手にはペットボトルのお茶。
「これあげるよ」
青木夏月は早く受けとれと言わんばかりに押し付けてくる。大抵の女の思考は読み取れるのに、この女がなにを考えてるのか分からなくてイライラしていた。



