あの雨の日、きみの想いに涙した。




「ねえ、こんなところでなにしてるの?」

ウィーンと自動ドアが開いてそこには長崎千尋が立っていた。竹田の気になる子だ。

俺がなかなか戻ってこないから呼びに来たのか?……まだひとりでいたいのに。

すると長崎はなぜか俺の横に座った。しかもかなり近い距離で。


動くたびに肩と肩が触れ合う。距離感を間違えたってわけじゃなさそうだ。

いつもなら冷たく引き離すところだけど竹田の気になる相手にはそうもいかない。いや、まずその前に隣に座ってるところを見られるほうがまずいか。


「加藤くんってやっぱりモテるでしょ?」

その声色である程度なにを意図にして聞いてるのか今までの経験で読めるようになっていた。


「モテないわけないよね。こんな綺麗な顔した男の子はじめて見たし、ひょっとして加藤くんって遊び人?」

「……なんで?」

「だって普通女の子がこんなにくっついて座ったらリアクションがあるのになにもないから」


ああ、普通リアクションするもんなんだ。

こんなの日常茶飯事だし、とは言えねーよな。

一応、冴木由希を偽らなきゃいけないわけだし。