あの雨の日、きみの想いに涙した。




スマホの画面を見ると【着信 さき】と表示されていた。


俺は一番最近ヤッた女の名前を思い出す。たしかあいつ……さきとかそんな名前だった気がする。

出るまで切らないっていう長い着信。


その振動すらうるさくて俺はまた廊下に出た。

『しつこいんだよ』と罵倒してやろうと思ったけど、それすらも面倒に感じて俺はそのまま部屋に戻らず、電話に出たフリをして足はカラオケボックスの出入口へ。


外は夏の香りがして風が気持ちよかった。

あの爆音と盛り上がる雰囲気から解放された気がして一気に力が抜ける感覚。

俺は入り口の段差に座り込んで「はあ……」とため息をついた。