あの雨の日、きみの想いに涙した。



「青木夏月(あおきなつき)です……」

女は順番的に俺の前に座ることになって、また消えそうな声で自己紹介をする。


「俺は竹田湊。よろしくね、なっちゃん」


いきなりあだ名をつけられて苦笑いもされてないけど、竹田のコミュニケーション能力は尋常じゃないから、初対面の人とすぐに打ち解けられるスキルはある意味尊敬する。


そのあとみんなはやっと歌を入れはじめて、くだらない会話を聞かされるよりはマシになった。


竹田は酒でも飲んだのかと思うほどテンションが高くて、うざさが倍増してるのは言うまでもない。

しかもすげー音痴だし、テレビ画面に表示されてる音程のグラフが上にいったり下にいったり。

俺はもちろんマイクすら持たずに、ひたすら飲み物をストローですすっていた。


そんな中で俺と同じように浮いている青木夏月。

隣の女が「歌おうよー」と誘っても「私下手だから……」の一点張り。俺が言えることじゃないけど、なにしに来たんだよって感じ。