あの雨の日、きみの想いに涙した。




奈々子と名乗る女は電話越しでまだなにかを言ってたけど俺は関係なしにスマホの通話終了ボタンを押した。

その時ちょうど目の前の壁にチラシが貼ってあるのが見えて、そこには【フリータイム680円 12時から20時まで】と書かれてある。


……まさかあいつら8時までいる気じゃないよな?

そうなったら地獄よりもさらに地獄。やっぱり帰ろうかな、なんて迷っていると……。



「あの……202号室の部屋ってここですか?」


廊下の雑音に混ざって聞こえた消えそうな声。

俺は声がするほうにゆっくりと目を向けた。