あの雨の日、きみの想いに涙した。




『もしもし由希ー?私の話聞いてる?』 

まだ繋がっていた電話にため息をつきながら、スマホを耳へと戻した。


『なんか用?』

『今暇ー?私、超暇なんだけど遊ぼうよー』


女は甘えた声で話しているけど、ぶっちゃけ全然聞こえない。俺はしかめっ面で廊下にあるスピーカーを睨みつけた。

……だからカラオケって嫌いなんだよ。


バカみたいに色んなアーティストの曲を爆音で流して、しかも防音なはずの各部屋からは下手くそな歌声もただ漏れ。

うるさくてマジでイライラする。


でも電話越しの声が聞こえなくても内容は大体わかる。俺のスマホに女から連絡がある目的はひとつしかないから。

 
気乗りはしないけど正直このまま合コンにいるよりはマシなんじゃないかと考えた。

帰る口実もできたし、またあの空間に戻ることを考えると逃げたくなる。

……でも俺は女の誘いを断った。


何回も頭を下げて頼んできた竹田の姿が頭に浮かんだからだ。我ながら〝らしくない〟