待ち合わせ場所は宮母川町。
香月町から少し離れた宮母川町まで電車で1時間。ひとつの駅を通過するたびに自分の鼓動が跳ね上がっているのを感じた。
宮母川町まであと12駅。5年ぶりに行く俺が生まれた町。
窓から見える景色が少しずつ記憶の中で封印してきたものと繋がっていく。
俺はその景色から絶対に目を反らさなかった。
暫く電車に揺られて宮母川駅に着くアナウンスが車内に響く。プシューという音とともにドアが開いて俺は宮母川駅に足を踏み入れた。
電車を降りたのは俺を含めて四人だけ。元々人気のない駅は相変わらず小さくて殺風景だった。駅を降りて外に出ると5年前に見た町の風景が広がっていた。
5年ぶりなのに不思議と懐かしさは感じない。
きっと俺の時間が過去で止まっているからだと思う。
今日で、今日をキッカケに俺の時間は進むだろうか。
そんなことはわからないけど、希望は捨ててない。
俺は覚悟を決めて一歩、一歩前に進んだ。父親との待ち合わせ場所は小さな公園。俺が住んでいた家からわずか数メートルしか離れていない場所だった。
なんで父親がその公園を指定したのかはわからない。
公園に行く前に俺はある場所で足を止める。その場所は俺が住んでいたアパートの前。
壁も階段も錆びついていて、今にも崩れそうな建物は5年経った今でも変わらずにあった。
このアパートにいい思い出なんてないけど、もし取り壊されていたら俺は悲しくなったと思う。
本当にいい思い出なんてなかったけど、俺にとって母さんと過ごした最後の場所だから。



