あの雨の日、きみの想いに涙した。







ザワザワとした駅の中。俺の記憶がやっと今と繋がった。


「……最初も言ったけど、私のあだ名はメガネちゃん。誰ひとり覚えてくれなかった名前を冴木くんは覚えててくれたの」


きっと宮野麻奈が一番分かってる。俺以上にあの行動に深い意味なんてないことを。

だからこそ、だからこそ……。


『やりきれなさだけが残ったちゃった。深い意味なんてないあの行動に救われて、涙が出るほど嬉しかったから」


宮野麻奈はいつだってひとりだった。

いつもメガネちゃんと呼ばれ、誰も本当の名前なんて知らなかった。

俺はただ他の女とは違う部類だったから覚えていただけだ。本当にそれだけだった。


「あの出来事さえなければ、私の密かな片思いで終わるはずだった。大切な初恋をあんな風に踏みにじられることはなかったのに」


きっと宮野麻奈だけじゃない。

俺は今までそんな気持ちで接してくれていた人たち全員を踏みにじってきた。

今なら分かるのに。

誰かを思う気持ち。誰かの特別でいたいと思う気持ち。

その気持ちに大きいも小さいもなくて、それを相手に伝えることがどれだけ勇気のいることなのか。

今なら痛いほど分かるのに、俺はそれを面倒くさいと言った。