あの雨の日、きみの想いに涙した。





だからと言って関わりがあったわけでも興味があったわけでもない。話した記憶もないけど、確か隣の席になったことはある。

もちろん、だれと隣になろうと俺には関係なくて授業中はいつも寝てばかりだった。

宮野麻奈が同じクラスで地味だった事実は分かった。だけどそれだけだ。

宮野麻奈を傷つけてしまった記憶まではどうしても思い出せない。でもこれでまた分からなくなってしまった。


だって宮野麻奈が今みたいに派手だったら、体の関係があったかもしれないと疑うけど、地味だった中学時代の宮野麻奈とは絶対にそういう関係にはなっていない。


暇潰しさえできれば誰でもよかったけど、面倒な女には絶対に手を出さなかった。とくに本気で俺に好意を抱いてくるような女は絶対に避けていたし。

そういえば以前、宮野麻奈はこんなことを言っていた。



――『だから私、高校に入って派手なメイクをするようになったの。……結局、冴木くんの態度は昔も今も変わらないけどね』


宮野麻奈はどうしていまだに俺に突っ掛かってくるんだ?

それほどまでに俺は傷つけてしまったのだろうか。


俺は卒業アルバムを静かに閉じた。それと同時にギィィ……と椅子から立ち上がる。アルバムを抱えてあまり思い出のない校内をゆっくりと歩きながら昇降口へと向かった。


生徒たちの靴箱が並ぶ昇降口の廊下。そこで俺の足はピタリと止まった。

理由は黒髪でメガネの宮野麻奈の顔が頭に浮かんだから。なぜこの場所で浮かんだのかは分からない。

だけど浮かんだ宮野麻奈の顔は悲しい顔。


〝……そんなこと、今まで気持ちを踏みにじられたことがないから言えるんだよ〟

あの時見た悲しい顔と同じだった。