青木の歌が耳に響く中、突然それとは違う音が居間に鳴り響く。


リリリリーンとベルみたいな音がする自宅の電話。

正直、この電話が鳴ったのは〝あれ以来〟だ。

せっかく最高の誕生日だったのに、なぜかその音を聞いた瞬間に現実へと引き戻された気がした。


「電話だね。出なくていいの?」

青木の歌は止まり、オレンジ色のろうそくの火だけがわずかに揺れる。

「………」

俺は無言で立ち上がって鳴り続けている電話の前に立った。


『……はい』

受話器に手を伸ばして声をだす。


『よう』

……ドクン……。


こんなひと言で心臓が跳ね上がるのはあいつの声だけだ。

また連絡するとは言っていたけどなんでこんな時に……。俺はチラッと青木に目を向けた。青木は火がついているろうそくが溶けはじめているのを気にしてるみたいだ。

俺は再び目線を電話に戻して心を落ち着かせた。


『今日はなんの用?』

自分でもバカな質問だと思った。

こいつが連絡してくる理由はひとつしかないのに。だけどたくさんの日にちがある中で〝今日〟だったから。

もしかしたら、なんて本当にバカげたことを思った。