あの雨の日、きみの想いに涙した。




学校が終わり帰り道。俺は駅に向かって歩いていた。駅に近づくにつれて思い出す今朝の出来事。


――『今まで見てきた夏月が全部偽りだったら?
全てが嘘だったらどうする?許せないでしょ?』

俺は許せると言った。

今も同じことを言われたらそう答える。それに、すべてが嘘だったと思いたくない自分もいる。


『私はね、冴木由希がどんな人間なのか知りたいだけ』

青木はそう言ってくれた。その言葉が嘘だとは思えない。


宮野麻奈は青木と親友だと言っていた。

……そういえば前に青木が言っていた。小学校でできた親友とは中学卒業までずっと文通してたって。

その文通していた親友が宮野麻奈?

もしかしたら宮野麻奈は中学の間、ずっと青木に俺の話をしていたのかもしれない。現に青木が俺を冴木くんと初めて呼んだ時に『本人の前では呼んでなかったもんね』と言っていた。


俺のことを冴木くんと呼ぶ宮野麻奈。きっと、ずっと前から青木は俺のことを知っていたんだと思う。


それならふたりでどんな話をしていたんだろう?俺に恨みがある宮野麻奈が言うことなんて大体想像はつくけど。


あの日、青木が自分のことを話してくれた夜。青木はなにか俺に大事な話をしようとしていた。だけど俺は……話の続きを遮ってしまった。

もしあの時遮らなかったら……青木は俺にどんな話をしていた?


やっぱり俺は真実を知るのが怖いのかもしれない。