あの雨の日、きみの想いに涙した。





自分自身でも変わってきてると実感しているけど、竹田に言われたのは初めてで……いつも一緒にいるからこそ、竹田がこうして言葉にしてくれたことに涙が出そうになった。


「冴木は今までしてきたことを後悔してんの?」


通常と変わらない竹田だけど口から出る言葉は真剣だった。俺はその言葉にコクリと頷いた。


「それでいいじゃん。自分のやってきたことに気づかないヤツより、気づけたお前はやっぱり変われたんだと思うよ」

「………」

「最低だった自分を後悔してるならこれから最低なことをしないお前でいろよ。そしたら俺は冴木と一生友達でいられるから」


竹田はニコリと笑ってまだ手つかずのパンを俺に手渡した。無言でそれを受け取ってひと口食べると、甘いパンのはずなのに少しだけしょっぱく感じた。


俺は何度竹田の言葉に救われたかわからない。

たしかに俺は今まで全てのことに無関心だった。だれかが笑っても、だれかが怒っても、だれかが泣いても、だれかを傷つけても、なにも感じることができなかった。 


したほうは覚えていなくても、されたほうは一生覚えているもの。

そんなことは俺は嫌というほど知っていたのに。見えない傷が一番痛いということも一番知っていたのに。


だけど、またここで落ちこんで心を閉ざしたら俺はきっと今まで以上に大切なものを失うと思う。

過去にしてきたことはどうにもできないけど、竹田の言うとおり最低だった自分を後悔してるなら、これからは最低なことをしない俺でいる。

それが今の俺にできる最大のことだと思うから。