あの雨の日、きみの想いに涙した。




「今まで見てきた夏月が全部偽りだったら?全てが嘘だったらどうする?許せないでしょ?」

宮野麻奈の声は少し震えている気がした。

嘘?偽り?許せるかって?
俺の答えは決まってる。


「許せるよ」

宮野麻奈の茶色い髪の毛がふわっと風に舞った。


青木と積み重ねてきた時間が偽物だったとしても、俺の気持ちだけは変わらない。変えたくはない。



「……そんなこと今まで気持ちを踏みにじられたことがないから言えるんだよ」

なぜだかその時の宮野麻奈の顔が見覚えのある顔のように見えた。ひどく、ひどく悲しい目。


きっと宮野麻奈の気持ちを踏みにじったのは俺だ。そうじゃなきゃ、こんなに突っかかってくるはずがない。



「……ごめん。なにも覚えてないんだけど俺なんかした?」


「冴木くんは私に〝なにもしなかった〟本当になにもしてくれなかった」


俺はその言葉の意味が理解できなかった。


「それに……〝ごめん〟なんて言葉。冴木くん言えたんだ……」


宮野麻奈は少しうつ向き何かを思い出してるようだった。


俺は宮野麻奈になにをしたんだろう?

いや、なにもしなかった?

俺はなにをしなかったんだろう?

自分のことなのに自分がしてきた行動が分からない。


でもこれだけははっきりとわかる。俺の言動や行動で、ひどく傷ついた人間がいるってことを。