あの雨の日、きみの想いに涙した。




青木に聞いてみようかと考えたけど、やっぱりそれを言葉にするのは難しくて。逆に『それなら冴木くんにとって私はどんな存在なの?』と聞き返されたら、俺はどうやって答えればいい?

他の人とは違う特別な存在なんて言ったら、青木はどんな顔をするのだろうか。

そんなことをごちゃごちゃと考えている間に電車が来て、あっという間に俺が降りる白石駅に着いてしまった。


「じゃあ、またね」

青木が俺に手を振る。青木が乗った電車が発車するのを見ながら自然にため息が溢れていた。


このため息は青木にたいしてじゃなく自分にたいして。青木になにも聞くことができない自分が情けない。

駅の改札を抜けて外に出ると、同じ高校の生徒がたくさんいた。


「なんで本当のことを聞かないの?」

声をかけられて俺はゆっくりと振り返る。


「そっちこそ同じ電車だったならもっと早く声かければいいじゃん」

振り返った先にいたのは宮野麻奈。


宮野麻奈も俺たちと一緒で香月町に住んでいるし、同じ電車に乗り合わせることはなんの不思議もない。きっとその口調からして俺たちが一緒に電車に乗っていたのを見ていたんだと思う。