あの雨の日、きみの想いに涙した。






次の日の朝。香月駅のホームで青木の姿を発見した。学生で混雑した空間で、音楽を聞きながら電車が来るのを待っている。


「おはよう」

イヤホンのしていない左耳で俺の声を拾った青木はゆっくりと振り向いた。

「あ、冴木くんおはよう」

青木は右耳のイヤホンも取りニコリと笑う。青木の顔は通常に戻っていて風邪は完全に完治したみたいだ。


「朝一緒になるなんて珍しいね。いつも何時の電車に乗ってるの?」

電車が来るまであと5分。そんな中、周りから視線を感じた。たぶん俺のことを知っているヤツ。そういえば前に青木と一緒に帰っただけで色々噂されたんだっけ。


俺のことはいいけど、青木のことを色々と言われるのだけはどうしても避けたい。自分自身が変わろうとしても、そう簡単に冴木由希というイメージは消えてくれない。


「青木、俺……」

俺が言葉を言いかけると青木がその言葉を遮った。


「いいじゃない、べつに。周りがどんな風に冴木くんを見ようと私はちゃんと知ってるから」

「え……?」

「冴木くんが優しい人だってこと。それに私は気にしないよ。どんな噂をされても冴木くんとなら」

俺とならどんな噂をされてもいい?

それはどんな意味で言ったんだろう?

青木にとって俺はどんな存在なのだろうか。今までそんなことは気にならなかったのに今はそれがすごく気になる。