あの雨の日、きみの想いに涙した。




竹田は長崎千尋のことが本気で好きらしい。好き人がいれば当然告白を受け入れるわけがなく、面と向かって言ってくれた女の子に少し申しわけなく思ってるみたいだ。


「冴木は目の前で告白されたことってある?」

告白……?それって好きだとか付き合ってとか?

本気か本気じゃないかはべつとしてそんな言葉は数えきれないほど言われてきた。ほとんど聞き流すか無視してたけど。


それが告白と言うなら俺はどれだけの女を振ったんだ?

竹田はきっとあの子のことも今日の出来事もしっかり胸に閉まっておくんだろうな。俺はだれかを振っても心なんて痛まなかった。相手の顔や言葉さえ覚えていない。


「……お前との差はでかいな……」

そうポツリと呟いた。


昔と今を比べれば俺は随分マシになってると思う。だけどまだだれかの心を労(いたわ)ったり、慰めたり、癒したりすることはできない。

それをどうやってしたらいいのかわからないし、自分の心を理解するのも大変なのに、人の心まで気にする余裕がない。


物事には必ず軸みたいなものがあって、きっと心にだって軸は存在すると思う。その軸がガタついていれば心もガタつくし、軸がしっかりしていれば心も安定する。

俺の心の軸は今でも凍ってる。

周りは溶けだしているけれど、中心にある軸はまだ凍ったままのような気がする。その凍りづけの軸に座り続けているあいつがいる限り。

いつか向き合わなくてはいけない。

面と向かって、いつかあの父親と。