あの雨の日、きみの想いに涙した。




「……宮野麻奈だよ」

――宮野麻奈(みやのまな)

繰り返し記憶の糸を辿ってみたけど聞き覚えがない名前。女は俺の心を読んだように「初めて聞いた名前でしょ?」と付け加えた。

その顔が一瞬悲しげに見えたのは気のせいだろうか?

女はジュースを手に抱えて俺と距離を取った。


「私ね、冴木くんってギャルで派手な子が好きなのかと思ってた」

ギャルで派手な女?悪いけど一番嫌いなタイプ。でも今まで関わってきた女はみんなそんな感じの女だった。

正直、一番ラクなタイプだったのはたしかだ。
お互いただの暇つぶしで利用して利用されてる。嫌いなタイプだったからこそできた行動だ。


「だから私、高校に入って派手なメイクをするようになったの。結局、冴木くんの態度は昔も今も変わらないけどね」


女はそう言ってスタスタと歩きはじめた。俺は呼び止めたりはしなかった。

ただ……〝昔も今も〟という言葉だけが引っ掛かっていた。


……だ、だれだ?あの女は一体だれ?