あの雨の日、きみの想いに涙した。




昨日……?俺は思わず振り返ってしまった。

だって、まるで俺が雨の中どこかに出掛けたって知っているみたいな……。

な、なんなんだ?この女は。女は俺の反応にクスリと笑って再び近づいてきた。


「由希が風邪ひいちゃったら大変だなーと思ったけど大丈夫みたいだね」

そう言いながら俺の手に触ろうとした女に足が一歩下がる。

意味深なことばかりを言う女に気持ちわるささえ感じていた。関わりたくない。本能的にそう思った。

行き場のなくなった女の手はゆっくりと元の位置に戻り、それと同時に信じられない言葉が飛んできた。


「はあ……やっぱり人ってそう簡単には変わらないよね。特に冴木くんは」


〝冴木くん〟と呼ばれた瞬間、女の顔が青木と重なってしまった。

この学校で冴木くんと呼ぶ女はひとりもいない。

みんな名前で呼びたがるしそれに、この女だって由希って呼んでいた。それなのになんで……?


「……お前、名前は?」

こんな女に興味はない。だけどここまで意味深に言われたら気にならないほうがおかしい。女は少し間をあけて答えた。


「……宮野麻奈だよ」