あの雨の日、きみの想いに涙した。




俺は誰かを殴れば殴るほど自分のことが嫌いになっていった。あの殺したいほど憎い父親に似ている気がして。


体から流れる血を見るたびに、あいつと同じどす黒くて汚れた血が自分にも流れてるんだと実感する。


痛いのは殴られた顔じゃない。
痛いのは……だれかを殴った拳だ。

殴りたくなんかない。でも殴られるのも嫌だ。


いつもいつもいつもいつも、殴ってくる相手が父親に見える。だから俺は殴り返す。殴られても殴ってもあいつの残像が消えない。

そんな日々を繰り返してたら、いつの間にか冴木由希という名前はまた別の意味で有名になっていた。


〝ネジが一本ぶっ飛んだ危ないヤツ〟

知らない人が俺を呼ぶ。毎日、毎日。


いつから俺はこんな人間になってしまったんだろう。


日に日に心が冷たくなる。なんでこんなに冷たいのに心は壊れないんだろうか。

いっそのこと壊れてなくなればいいのに。