あの雨の日、きみの想いに涙した。




ガヤガヤとうるさい廊下。4限目が終わってみんな食堂に向かっていた。その途中、すれ違う女子たちがコソコソと耳打ちをする姿が見えた。

いつものことだ。俺はある意味この学校で有名人らしい。


高校に入って早4か月。家から電車で15分の所にある白石高校に入学した。


俺は中学からこんな人間だったから知らず知らずに〝冴木由希〟という名前だけがひとり歩きしていた。だからこの学校に入学して知り合いなんていないのに俺に声を掛けてくる人は大勢いた。


俺に興味があるヤツ。
俺を誘ってくるヤツ。
俺に恨みがあるヤツ。

だれひとりと見覚えがないのに相手は俺のことを知っている。本当に気持ち悪い。

 
高校に入ってすぐ三年の女に誘われた。それを機に二年の女、一年の女。4か月の間に数えきれない女とヤった。快楽、というよりは俺にとってなにかを吐き出す作業にすぎない。