八月の指定席【花火・短編】

「気遣うっていうより、思い出してほしくないから」

「…へ?」

「もう、あの子のこと、忘れてよ」

忘れてと言われて、簡単に忘れられるもんじゃないよな。

どうしても、ふとした拍子に思い出してしまう。




「オレもさ、忘れたいんだけど…」

「もっと身近な所に…目を向けてよ…」

酔ってるのか、頬をさっきより赤く染めてオレを見つめるマコ。

え…今、マコが言った言葉の意味って…?




「ちょっと待てよ?身近ってどういう…」

「もー!ユースケ何でわかんないの?

私が何でずっとアンタの面倒みてきたか…。

やっぱり、何も気付いてなかったんだねっ」