キミ色ヘブン

だいたいさぁ、黒髪の私なんて見たことないでしょ?だって入学してすぐ茶髪にしたもの。華に『優等生』って言われてさ。

中山君、いい加減な事言っちゃってさ。調子いいにも程があるよ。飴でなんて騙されないもん。

私が無言で中山君を見詰めていた時、『島先生、準備の鍵──』と言う声と共にドアが開いた。

「三上さん?あれ?三上さんって文芸部だよね?」

中山君のその台詞に私が目を見開いてしまう。
彼が『三上さん』という名前を知っていて、そのうえその人の部活名まで知っていることに心底びっくりしていた。

「うん。『写真も美術のうちだから、美術部にも所属してくれ』って顧問の島先生に頼まれたから掛け持ちしている」

そう。このぶっきらぼうな喋り方をする三上直美(ミカミナオミ)さんは美術部の救世主。彼女は、人数的に同好会に格下げまたは廃部に追い込まれそうな我が美術部の頼みの綱の頭数合わせ要員。

っていうか顧問の島先生が『美術部以外の顧問なんてやる気がしねぇ。俺のためにもこの部活を潰すわけにはいかねぇ!』と捕まえてきたのが彼女だったのだ。