開けかけた口を、両手で塞ぎグルッと後ろを向いた。 一瞬だけ見えた顔が、さっきあたしが置いてきた失礼最低男だったから。 「おい」 声をかけられるとビクンッと身体が跳ねる。 ―きっと気のせいだよね。 と、思いたいが明らかにこの場には、あたしとあいつしかいない。 あたし以外に声をかける相手はいないんだ。