そんな事を思っているとパタパタと足音が聞こえてきた。 ―しかもこっちに向かって来てる!? だんだんと足音が大きくなってきて、あたしがいる方とは逆のドアの前で男が止まった。 ハァハァと膝に手をついて肩を上下させている。 俯いているから誰だかは見えない。 ―そんなに走る位なら、もう少し早く来ればいいのに。 不意にその男が、顔をあげる。 「あっ」