二度目の飛び蹴りをお見舞いされた失礼男は、明らかに痛そうだ。 「麻ちゃん」 苦笑いをしながら、遠慮がちに隣から名前を呼ぶ弘行くんの声を、無視して家の方へと向かう。 後ろを振り向くと「すいません」と、頭を下げて謝っている弘行くんの姿と「いえ、こちらこそ」と、苦笑い気味に謝っている皐さんの姿が見える。 ―弘くんに悪いことしちゃったかな。 少し申し訳なくなったが、“ちび”と言ってきた失礼男には、何の罪悪感も感じない。 それより怒りの方が上だったために、何も言わずに家の中に入る。