週末の、アフターファイブ。


けっこうな値段がするにもかかわらず、ホテルの展望レストランは、大勢の客で賑わっていた。


ほとんどが、私たちのようなカップルだ。


微かに流れる、洗練されたBGM。


適度に落とされたシャンデリアの明かりの下。


二人掛けの丸テーブルには、白いテーブルクロス。


ディナーを一通り平らげた後のテーブルの上にあるのは、ワイングラスとチーズ類が乗ったおつまみの皿。


窓の外には、まだ当分眠りにつきそうもない、夜の町の灯りが、星空のように瞬いている。


フルコースの料理で、お腹もいっぱいだし、ワインも美味しい。


たまには、こういう贅沢もいいものね。


なんて、おごって貰っておいて良いご身分な感慨にひたっていたら、今日の招待主様が、ニコニコ笑顔で爆弾発言を投下しなさった。


「なあ、亜弓。もうそろそろ、結婚を視野に入れないか?」


「へ?」


予想外の。


ううん。


予想はしていたけど、あえて想像しないようにしていたこの事態に、私は実に間抜けな声を上げた。