静かに言うと、露台の柵(フェンス)からサクラを抱えた紫苑を突き飛ばした。 (ーな!?) ヒラリ、桜が舞う。 サクラに掛けられた桜柄。遠のく橘の姿。 それはまるで、コマ送りの様にー 突然の事だったが、紫苑の躯は自然な動きでサクラを抱えたまま、軽々と芝生に着地した。 「橘!!」 片膝を芝生に着き、着地した体勢のまま紫苑は二階の露台を見上げる。 露台には穏やかな表情の橘。それは紫苑が見た、写真の橘の姿のままだった。