―――妻との関係は最悪に近かった。



同じ空気を吸うことさえ儘ならない俺は、遅くまで残業したり飲み歩く。





だけど、片瀬さんに対する気持ちが好きだと分かった時から


他からの女性の誘いは全て断るようになっていた。



彼女以外に興味がないし、俺なりのけじめだと思ったから。





妻に対しては全く思わなかった感情に自分でも驚く。



今まで妻が何を考えているのか、どう思っているのかなんて考えたことなどなかったから。



時々、顔を合わせると子供の話をしてくるけれども、相槌を打つだけで終了。



―――そうすると妻は俺の気を引くためだけの些細な嘘を付く。