妻は、お腹に手を当てながら
「貴方は何も悪くないじゃない。向こうが勝手に突っ走ったんだもの」
そう言って微笑んだ。
そして・・・
「でも私、こんな怖い思いしたの初めてだわ」
そう言った。
―――初めて?
怪訝な顔をして顔を上げるのと、妻が口を覆って目を背けたのが同時で。
―――もしかして・・・
「お茶入れるね」
立ち上がってキッチンへと向かう妻の背中を見ながら、さっきの言葉が繰り返される。
―――『こんな怖い思いしたの初めてだわ』
直接ストーカー女性と対峙した時の方が怖かったんじゃ?
―――なぜ・・・初めて?
考えたくなかった。

