「そういえば、佐々木って子供いたよな?」



藤井課長に話を振られ、気持ちが顔に出ないよう引き締めてから目を合わせる。



「去年生まれました」


「そっか。やっぱり子供って可愛いか?」


「・・・そうですね」



思わず言葉に詰まりそうになるけど、何とか答えた。




―――転職した次の年、俺は父親になった。



妻とはお見合いはしていないから、一応恋愛結婚の括りになるんだろう。



でも・・・





―――妻を愛してはいなかった。






妻は以前勤めていた会社の取引先の受付嬢で向こうから告白され


断って仕事に支障をきたしたくないと思い付き合い始めた。