『貴方の好きな彼女が傷つかないといいわね』
俺を騙して結婚までした妻が、彼女に何をするか分からないと思うと仕事中でも気が気でなかった。
取りあえず危害が及ばないようにすることが、俺に出来る一番の事で。
せめてメールをと思っても妻の言葉が頭を過り、送ることができない。
―――彼女を守らなければ。
俺のせいで彼女を傷つけることだけは絶対にしたくない。
妻と初めて向き合ってから10日が過ぎる頃、突然実家に戻ると言いだした。
何度か離婚の話を切り出したけど、妻は俺と向き合おうとしなかった。
義父母に預けている子供に会いたいからという言葉は俺から逃げるための嘘。

