会社に電話してくるなんて初めての事で、俺は少なからず動揺した。 動揺を隠すように受話器を上げて点滅している外線ボタンを押す。 「・・・はい」 『あっ、私です。ごめんなさい会社に電話して。あの・・・あの』 「どうしたんだ?」 嫌悪感しか感じない妻には優しい声なんて出せなくて。 横で聞き耳を立てていた高橋の顔も少し怪訝そうになったのが分かる。 しばらく押し黙っていた妻は 『ママが・・・母が倒れたの』 そう言うとヒックとしゃくり上げてから 堰を切ったように泣き出した。