伊藤が歌い始めて、俺は片瀬さんの場所を確認する。
コの字型の座敷で、モニターの右側から吉田さん、片瀬さん、伊藤、上原部長、前川さん、俺、高橋の順。
ノックの音がして、店員さんがドリンクを運んできたので
前川さんと吉田さんが手分けして全員のドリンクを配ってくれた。
ビールを手にとって、何とか彼女に近づけないかと考える。
「手伝ってやろうか?」
―――左から声が聞こえ、顔を上げると高橋がニヤリと笑っていて。
自分から行動を起こした俺を応援してやろうと思ったらしい。
「俺が吉田さんと話したがってるからって言えばいいじゃん」
「・・・見返りは?」

