「片瀬さんを待ってたんです」
「え!!」
びっくりしたのか鞄を落としそうになっている少し背の低い彼女がすごく可愛くて。
「も〜からかわないでください!」
彼女は鞄で口元を隠しながら、俺の腕を叩いていて。
「からかってないですよ?」
そう言いながら、どんな顔をしているのか知りたくなった俺はそっと鞄を口元から離してみた。
「ダメだ〜佐々木さんのペースに乱されてる」
―――少し赤くなっている顔がひどく魅力的で。
「俺の方が乱されてます」
エレベータの下向きのボタンを押して、思わず言ってしまった本音を隠すように微笑んでみた。

