進もうとする道には

困難ばかりが転がっているように思えた





「ふざけんな!!」


そんな怒声と共にスタジオのドアが派手な音を立てて閉められた。
不快な残響が耳について、俺は浅い溜め息を吐き、傍らのガキを見詰める。


「敦士ぃー。オマエ、メンバー集める気ぃあるの?」

「……ある」

「だったらなんでもうちょっとさぁ、」

「妥協しろって言うんだろ?嫌だね」


ひとの台詞をぶった切ってそう言い放った敦士は、仏頂面のまま部屋の片隅に置いてあった自分のギターを手にとった。


「ギターは俺がやるからいい。ベースだけ探す」

「マジで言ってる?」

「俺は冗談は言わない」


いやいやいや、十分冗談に聞こえますが。
そうツッコミたいのをぐっと抑えて、俺はもう一度溜め息を吐き出した。

敦士をオトしてから約2週間が経っていた。いろんなライヴハウスやスタジオにメンバー募集のチラシを貼ったり配ったりして、いわばオーディションを繰り返したものの、大抵は敦士の「下手糞」のひとことで殆どの奴が回れ右。
一向に新メンバーが決まる気配がないことに、正直辟易していた。