「次は無いと思ってね。」


南雲彩華とその取り巻き達は、愉快そうに笑っている。


「分かってると思うけれど…この事言ったらどうなるかしら?」

「ッ!!」


榛原美奈の肩が大きく揺れる。その反応を見て笑みを浮かべながら南雲彩華達は去った。


「・・・。」


一体どういう事なんだろうか?これは話が分かるまで付き合うしかない。


「面倒な事になりそう。」


私は榛原が去ったのを見届けて、家に戻ることにした。


「…」


暗い暗い森の奥。
私のアゲハ蝶達にとって、格好のこの土地に私達は住んでいる。


地獄の使い魔として、私は何百年もの間この仕事をしている。


今では“地獄渡し”でさえ、苦ではなくなった。
蝶達が私に近づき、行く手を阻む。このアゲハ蝶はただのアゲハ蝶ではない。


それぞれ特殊な能力を持ち、地獄からの使者と言われる。
“地獄渡し”の手伝いをしてくれる、私の一部の部下達だ。


「今日はまだ遊べないわ。」


そう言うと蝶達は私から離れてくれた。
寂しそうな雰囲気を醸し出しながら、
蝶達はそれぞれの時間を思い思いに過ごしている。


暫くそれを見届けた後、今度こそ家の中に入る。
真っ直ぐ目的の部屋へ行く。
他の部屋には興味は無い。


「姫、お帰りなさい!!」

「姫〜!!寂しかったぁ!!」

襖を開ける前に、飛び出してきた金髪の顔のよく似た双子。
楓と蓮。私の仲間の一人だ。


「ただいま。來と馨は?」

「來は今帰ってきたよ。姫。」

「馨ちゃんはまだだよ。姫。」

「そう。」

「蛍が怒ってるよ。姫。」

「なんで?」

「馨ちゃんにお願いしたからだよ。姫。」

「……ありがとう。」


本当は來の元に行くはずだったのだけれども、まずは蛍の話を聞こう。