嘘。 これはきっと夢なんだ。悪い夢。 感触が生々しく感じているだけ。 きっと、そう……。 ああ、私。 榊に抱き締められてるんだ。 私よりも少しだけ黒い腕を見つめながら、やっと理解する。 「……離せって、言わないのか?」 後ろから榊の声がした。 でも、それに答える事なんて、出来ない。 「満原?」 もう一度、榊は私を呼ぶ。 それにも、私は答えない。 だから、無理なの。 「離せ」なんて、言えないの。 今の私は、何も答えられないの。