「……ゆき」
抱きしめて、その名前を呼ぶ。
するとゆきは肩をピクッと跳ねさせ、「は、はい!?」と声を上げた。
藍沢はさっき「……はぁ。じゃあ、俺の役目もここまでだな」という言葉を残し科学室を出て行き、
今は2人だけという状況だ。
うわ、なんか心臓ドキドキしてきた……。
だって、ゆきと2人きりって……どうしよう。
いや、まず、本当にゆきは俺のことが好きなのか?
だって、ゆきは俺のこと、軽蔑してて……だから……。
「何で、今日…私を避けてたの?」
少しだけ顔をあげ、不安げに聞いてくるゆき。
俺は素直に、その質問に答えた。



