待ち合わせ時刻まで、あと一分……。 「………帰ろう」 ポツンと呟いた声が、雨の中に溶け込んでいく。 そして俺は諦めて帰ってしまおうと、足を一歩踏み出した。 それと同時に、 ―――ゴーン… それは、10時になったことを知らせるチャイムだった。 その瞬間、俺の視界にある人物が映りこんだ。 ………え。 自分の目を疑った。 だけど、何度みても、やっぱり俺の目に映るのは…… 「―――遅いんだよ、ゆき」