「―――遅いんだよ、ゆき」



どしゃ降りの雨の音にかき消されながらも、そんな声が私の耳に響いてきた。


「なん…で?」

「なあゆき、俺昨日…“ゆきは来なくていい”って言ったんだけど??」


そんな言葉で、やっと気付く。


ああ、そっか。

私に来るなって言っただけで、歩くん自身が来ないとは……言ってないや。


「歩くんっ…ごめんなさい」

「……ゆき」


「いったん、どこかの建物に入ろっか?」と言って、歩くんは私の手をキュッと握った。


あう……っ!