いきなり紗希ちゃんがそう呟いたので、パッと俯かせていた顔をあげる。


「今の時間は9時45分。もし待ち合わせがあるなら…」


「10分前に行くのが礼儀でしょ」と言って、苺タルトにフォークを突き刺した。

そして……


「今しかできないなら、今やりなさい。ゆきしか出来ないことなら尚更。じゃないと……」


「後悔は嫌でしょ?」と言って、紗希ちゃんはニコリと笑った。


―――ドキン


紗希ちゃんのその大人っぽい雰囲気にも、その笑顔にも……

そして言葉にも。

なにもかもに、心臓がドキンと脈を打った。