―――ガラッ! 何も考えずに走って、何も考えずに科学室の扉を開けた。 「……はっ、はっ」 息が荒い。 私はうつろな目で、科学室の中を見渡す。 歩くんは…… 「―――遅いんだよ」 イラついてるような、嬉しそうな声が、科学室の中に響いた。 「戻ってくるなら、もっと早く戻ってこいよ。それが正解」 「ゆきはちょっと、遅すぎたかな」と言って、歩くんは腕と足を組んで私を見つめる。 その姿はまさに……王子様。